「アニメーターは給料が安いって本当?」「学費を払っても回収できるの?」。
この職種を調べると、必ず収入の話に行き当たります。ただし数字の出どころも、どの立場の話なのかも書かれていないことが多くあります。
本記事では、公的な調査と業界データをもとに、収入の実額を整理します。
読み終えるころには、「安い」と言われる中身と、その先に何があるかが分かります。
この記事でわかること
- 動画マンと原画マンで年収が大きく違うこと
- 出来高制という仕組みが収入を決めていること
- 学費266万〜306万円と初任給の関係
- 就職先によって給与形態が変わること
- 収入を上げる3つの道筋
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この記事の情報源
年収の数値は、業界の調査データおよび厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)に掲載された金額を整理したものです。居住地の割合は文化庁の実態調査によります。調査年度や母数によって数値は変わるため、目安として扱ってください。
「安い」の中身は動画マンの時期
まず数字を並べます。同じアニメーターでも、担当によって年収が違います。
同じアニメーターでも、担当で年収が変わる
「安い」と語られるのは動画マンの水準。原画マンになると平均に近づく。
図1:担当別の年収
動画マンの平均年収は263万円、原画マンは400万円です。中央値ではそれぞれ243万円と355万円になります。
語られているのは新人の水準
「アニメーターは安い」という話の多くは、動画マンの時期を指しています。
原画マンになると、日本人の平均年収461万円に近づきます。職種全体が低いのではなく、入り口の数年が低い構造です。
初任給は大卒をやや下回る
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、新人アニメーターの平均初任給は24万3,600円です。年収に換算すると292万円になります。
同じ調査で、大学新卒の所定内給与額は24万8,300円でした。極端に低いわけではありませんが、高くもありません。
出来高制という仕組み
なぜ新人の収入が低いのか。理由は給与の計算方法にあります。
動画は「1枚いくら」の出来高制
枚数がそのまま収入になる。新人が低いのは、まだ速く描けないためという構造。
図2:出来高制と収入の関係
動画(中割り)の仕事は、1枚いくらの出来高制が基本です。描いた枚数がそのまま収入になります。
速く描けないと収入が伸びない
新人は技術が追いつかないため、描ける枚数が限られます。これが収入の低さに直結します。
慣れてくると1日30〜40枚、月1,000枚ほど描けるようになり、年収300万円程度まで上がると言われています。
つまり「安い」のは待遇の問題だけでなく、技術がまだ収入に変換されていない状態という側面があります。
診断:あなたが確認すべきことは
いまの状況に、いちばん近いものを1つ選んでください。
動画マンの時期をどう乗り切るか考える
動画マンの平均年収は263万円です。原画に上がるまで1〜2年かかるため、この期間の生活費を先に試算してください。
就職先の給与形態を確認してください
完全な出来高制か、固定給+出来高かで最初の数年が変わります。正社員として雇用するスタジオもあります。
数年では回収できません
2年制の学費266万〜306万円に対し、動画マンの年収は263万円です。長く続けて原画・作画監督へ進む前提で判断してください。
ゲームや広告も選択肢に入ります
作画の技術はアニメ以外でも使えます。ゲームのモーション制作や映像広告の分野なら、給与形態が安定している場合があります。
上京が前提になる可能性が高い
文化庁の調査では、アニメーターの68.6パーセントが東京都に住んでいます。就職を考えると住居費も計算に入れてください。
数字は調査によって幅があります。目安として扱い、最新の実態調査で確認してください。
原画マンになると変わる
収入が変わる分岐点は、原画への昇格です。
動画マンから原画マンへの道のり
- 入社1年目動画(中割り)を担当描ける枚数が収入を決める
- 1〜2年目枚数が増えてくる年収300万円程度まで
- 2〜3年目原画に上がる1カット単位の報酬に変わる
- 数年後作画監督を任される固定報酬の仕事も増える
- その後演出・監督へ制作全体に関わる
動画から原画へは1〜2年かかると言われる。最初の数年の生活費を用意しておく必要がある。
図3:キャリアの進み方
動画から原画へは1〜2年かかると言われています。原画は1カット単位の報酬になり、単価が上がります。
最初の数年をどう乗り切るか
ここが現実的な課題です。原画に上がるまでの生活費を、あらかじめ用意しておく必要があります。
実家から通えるかどうかで、この時期の負担が大きく変わります。
その先には作画監督や演出
原画の経験を積むと、作画監督を任されるようになります。固定報酬の仕事が増え、収入が安定します。
さらに演出や監督へ進む道もあります。制作全体に関わる職種で、アニメーターとは別のキャリアになります。
学費との関係
収入の話が出たので、学費と並べておきます。
学費と、卒業後の収入を並べる
在学中に払う
- 2年制の学費 266万〜306万円
- 教材費が別に必要
- 上京するなら住居費も
卒業後に得る
- 動画マンの平均年収 263万円
- 原画マンになれば 400万円
- 作画監督ならさらに上がる
最初の数年で回収できる金額ではない。長く続ける前提で判断する必要がある。
図4:学費と収入の関係
2年制の学費は266万〜306万円です。動画マンの平均年収263万円と、ほぼ同じ規模になります。
数年では回収できない
投資として見ると、最初の数年で回収できる金額ではありません。
ただし原画マンで400万円、作画監督ならさらに上がります。長く続ける前提なら、話が変わります。
逆に言えば、数年で辞める可能性があるなら、学費の重さを慎重に考える必要があります。
アニメ分野の学費と職種は、別記事で整理しています。
就職先で条件が変わる
同じ動画マンでも、スタジオによって給与形態が違います。
給与形態はスタジオによって違う
完全な出来高制
- 描いた枚数だけ収入になる
- 新人の時期は収入が読めない
- 体調を崩すと収入が止まる
固定給+出来高
- 最低限の収入が保証される
- 正社員として雇用する会社も
- 人気が高く倍率も上がる
働き方改革に取り組むスタジオが増えている。就職先で最初の数年が大きく変わる。
図5:給与形態の違い
完全な出来高制のスタジオと、固定給に出来高を上乗せするスタジオがあります。
働き方改革に取り組むスタジオが増えています。就職先の選び方で、最初の数年が大きく変わります。
収入を上げる3つの道
アニメ業界の中で上がる道と、外へ広げる道があります。
収入を上げる方法は3つある
動画マンとして経験を積む
▼
アニメ業界で上がる
- 原画マンへ昇格する
- 作画監督・演出を目指す
- 条件の良いスタジオへ移る
他分野へ広げる
- ゲームのモーション制作
- 映像・Web広告の作画
- 作画技術は他分野でも使える
アニメ以外にも活躍の場がある。作画の技術はゲームや広告でも需要がある。
図6:収入を上げる道筋
業界内なら、原画マンへの昇格、作画監督や演出への進出、条件の良いスタジオへの移籍です。
アニメ以外でも作画技術は使える
見落とされやすい選択肢があります。ゲームのモーション制作や、映像広告の作画です。
作画の技術はアニメ専用ではありません。給与形態が安定している分野へ移る道もあります。
ゲーム分野の職種と学費は、別記事で解説しています。
仕事は東京に集中している
もう1つ、進路に影響する事実があります。
仕事は東京に集中している
- 東京都に住むアニメーター68.6%
- それ以外の地域31.4%
文化庁の実態調査による。就職を考えると、上京が前提になる場合が多い。
図7:アニメーターの居住地
文化庁の実態調査によると、アニメーターの68.6パーセントが東京都に住んでいます。
上京の費用も計算に入れる
地方在住なら、就職と同時に上京する可能性が高くなります。収入が低い時期に、住居費が加わります。
学費だけでなく、卒業後の生活費まで含めて試算してください。東京での生活費は別記事で試算しています。
学校選びで確認する5点
ここまでの内容を、確認の手順に落とします。
学校を選ぶときの5つの手順
志望するのが動画か原画か演出かを決める
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就職先の給与形態を確認する(固定給の有無)
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最初の数年の生活費を試算する
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学費に教材費と住居費を足す
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在校生の就職先を社名と人数で聞く
3番目を飛ばさない。原画に上がるまでの1〜2年をどう乗り切るかが最初の壁になる。
図8:確認の手順
志望職種を決め、給与形態を確認し、最初の数年の生活費を試算する。そのうえで学費を足し、就職先を実数で聞く順番です。
就職先は社名と人数で聞く
「アニメ業界に就職」という表記だけでは判断できません。動画マンとして何人が、どのスタジオに入ったのかを確認してください。
あわせて、卒業生が原画に上がるまでどれくらいかかっているかも聞く価値があります。
よくある質問
アニメーターの収入について、多い5つの疑問に答えます。
アニメーターの年収はいくらですか?
動画マンの平均年収が263万円、原画マンが400万円です。担当する工程によって大きく変わります。
なぜ新人の給料が低いのですか?
動画の仕事が1枚いくらの出来高制だからです。新人は描ける枚数が少ないため、収入も少なくなります。
いつから収入が上がりますか?
原画に上がる1〜2年後が目安です。1カット単位の報酬に変わり、単価が上がります。
学費は回収できますか?
数年では難しい水準です。2年制で266万〜306万円かかるため、原画・作画監督へ進む前提で判断してください。
アニメ以外の道はありますか?
あります。ゲームのモーション制作や映像広告の分野でも作画技術が使えます。
これらの分野は給与形態が安定している場合もあります。
まとめ:低いのは入口の数年
本記事では、アニメーターの収入を実額で検証しました。
動画マンの263万円は確かに高くありません。ただし原画マンになれば400万円で、日本人の平均に近づきます。
問題は、そこに至るまでの1〜2年をどう乗り切るかに集約されます。
学費だけでなく、卒業後の生活費まで試算してください。就職先の給与形態が固定給を含むかどうかで、この時期の負担は大きく変わります。